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精神的に向上心のないものは、馬鹿だ  
2008.01.10 (Thu)
夏目漱石の「こころ」に、
「精神的に向上心のないものは、馬鹿だ」
というセリフが出てくる。

作品のなかでは結構重要な役割のある言葉だが、
高校生のときに国語の教科書でこれを読んだときは、
「向上心」という言葉が、いまいちピンとこなかった。

当然それまでにも、学校の月間目標だとかその他いろいろの機会に
この「向上心」という言葉を幾度となく目にしていたはずだし、
辞書的意味はもちろん理解できていたわけだが、
この作品を読んだときに「そんなに重要な言葉か?」という感想をもった覚えがある。

それをふと思い出して、なぜだったのかと考えてみた。


答えはきっと、当時は何も考えなくても向上していってたからだろう。

幼稚園→小学生→中学生→高校生と育つにつれて、
目に見えて身体的に発達するだけでなく、
経済的・社会的な制約も段階的に少なくなっていき、
やれることは無条件で増えていった。

「向上心」なんて言葉を持ち出すまでもなく、僕らは向上をいくらでも実感できた。


ところが、20代になり、身体的発達も止まり、社会的に禁止されることもなくなり、
受動的な学習の機会も一通り卒業してしまうと、
途端にその後の生き方について丸投げされてしまったような感覚に陥る。

知的な向上を得るためには、自分でテーマを決めて勉強しなくちゃならない。
身体的な向上を得るためには、スポーツなりビリーなりをやらなくちゃならない。
社会的な向上を得るためには、コンクリートジャングルで戦わなくちゃならない。
経済的な向上を得るためには、給料の高い仕事なり役職なりを求めなくちゃならない。

こういった「向上しよう」という気持ちを指して、「向上心」と呼ぶのだ。


「精神的に向上心のないものは、馬鹿だ」
今ならずしんと胸にひびくぞ。



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