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我々の不合理な決断は前もって予測できる―予想どおりに不合理  
2008.12.01 (Mon)
最近は書店で本を衝動買いすることってあまりないんだが、
これは衝動買いしてしまった。

予想どおりに不合理―行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」

人は意外に合理的』と隣りあわせで陳列されてたのが
何の意図だか知らないが、こちらもそのうち読みたい。


ともかく、これはエキサイティングな本だった。

タイトルの「予想通りに不合理」(Predictably Irrational)ってのは
なんともうまい言い回しだなぁという感じだが、
要するに、人間の行動や判断における無意識的なバイアスがまとめられた本である。


ふつうの経済学は、わたしたちが合理的であると考える。つまり、決断に役立つ情報をすべて知っていて、目の前のさまざまな選択肢の価値を計算することができ、それぞれの選択による結果を何にも邪魔されずに評価できると想定している。
 そのため、わたしたちは論理的で分別のある決断をするものと見なされる。そして、たとえときにまちがった決断をするにしても、ふつうの経済学の見方によれば、自分の力で、あるいは「市場原理の力」に助けられて、その失敗からすぐに学べることになっている。経済学者は、このような前提にもとづいて、買い物動向から法律や社会政策にいたるあらゆるものについて影響力の大きい結論を導きだしている。
 しかし、本書(や類書)の実験結果が示すように、わたしたちがくだす決断は、従来の経済理論が仮定するほど合理的ではないどころか、はるかに不合理だ。といっても、わたしたちの不合理な行動はでたらめでも無分別でもない。規則正しくて予想することもできる。脳の基本的な配線のせいで、だれもが同じような失敗を何度も繰り返してしまう。だとすれば、ふつうの経済学を修正し、未検証の心理学という状態(理由づけや、内省や、何より重要な実験による精査という検証をしていないことが多い)から抜けだすのが賢明ではないだろうか。



行動経済学という学問分野を強調するあまりに、
心理学や経済学を過小評価している感は否めないが、
確かに、これだけのでかい口をたたいているのも納得の一冊である。

本書で紹介されている概念自体は決して目新しいわけではないものも多いが、
本書がエイサイティングなのは、その独自の検証実験である。

見事に条件を統制しながら、一般的に行われるレベルの実験の
さらに一歩先まで踏み込んでとことんやっているものが多く、
なんとも"味わい深い"結果が得られている。


Q. 無料で10ドル分のアマゾンギフト券を受けとるのと、
  7ドル出して20ドル分のアマゾンギフト券を受けとるのとでは
  どちらを選択する人が多いだろうか?
→A. 無料で10ドル分のギフト券を受けとる人のほうが多い

Q. 5ドルの報酬を受けとった人と、50セントの報酬を受けとった人と
  まったく見返りのない人とでは、誰が一番熱心に課題に取り組むだろうか。
→A. まったく見返りのない人

Q. 共用冷蔵庫にこっそり入れておいた缶コーラと1ドル札、
  先になくなっているのはどっちだろうか。
→A. 缶コーラ

このような実験の結果に興味がある人には自信をもっておすすめできる本である。


なお本書では、そういったバイアスを知った上で
我々がどのように行動するのがよいか、ということまで
ご丁寧に書かれているのだが、その部分はあまり重要ではない。

なぜなら、我々が普段どのような枠組みにとらわれているのかを知ること自体が
その枠組みから抜けだして物事を見るということに直接つながるからである。
(もちろん本書の中で著者自身の体験が度々語られているように
 必ずしもそれは容易なことではないが。)


また、本書の中で紹介されているもの以外にも、
同じように行動や判断においてとらわれているバイアスというのは
まだまだあると思うので、本書で興味を持ったひとは
この「行動経済学」の深みにどんどんはまっていくのが良いのではないかと思う。

たとえば本書にないものでは、サンクコスト効果の概念を使って
保険商品の「お祝い金」に惹かれる心理とかも説明できそうだなとか
ちょっと思いついた。
そのうち記事に書くかも。



他ブログ様紹介記事:
予想以上に合理的! - 書評 - 予想どおりに不合理(404 Blog Not Found)
『予想どおりに不合理』がもうすぐ出るよ。(POLAR BEAR BLOG)

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