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開けっ放しのドアはいかにして生じるか―情報共有と現状維持バイアス(前)  
2008.10.29 (Wed)
デパートやビルの入り口のドアが、
気がつけば開け放されていることがある。
「ドアは必ず閉めてください」という貼り紙をしても効果がなかったりする。

このような「開けっ放しのドア」が生じてしまうのはなぜか。
それはおおよそ、次のようなプロセスを経て生じていることに気がついた。

最初にドアを開けて中に入った人が、
すぐ後ろから入ってくる人のためにドアを開けたままにしておく。
      ↓
後ろの人が、開いたままのドアから中に入る。
すぐ後ろから人がやって来るので、やはり開けたままにしておく。
      ↓
後ろの人が、開いたドアから中に入る。
最初の人がドアを開けるところを見ていないので、
初めからドアが開いていたものと思い、開けたままにしておく。



若輩者ながら、これまでいろんなところに身をおいて
プロジェクトっぽいことに参加する中で、
チームとして何らかの目的のある活動を行うときには
この「開けっ放しのドア」を生む構造を作らないようにすることが
ひとつの課題でないかと思うようになった。

そのためには、情報の共有現状維持バイアスの理解
重要なポイントとなるのではないかという考察。


情報の共有

上記において開けっ放しのドアが生じたのは、
「もともとドアは閉まっていた」という情報が
いつのまにか共有されなくなっていたからである。

活動の規模が大きくなるほど情報の共有は難しくなり、
ホウレンソウホウレンソウと叫ぶだけでは解決しない問題となる。

情報の共有について、自分なりに大事だと思ったことをまとめておきたい。


情報の共有においてもっとも大切なことは、
必ず明文化することと、それが目に入るしくみを作ることである。


◆明文化

情報の明文化を考える際に、まず意識すべきポイントは、
新しい情報だけでなく、現在のルールに至るまでの
過去の変遷を全て記録として残しておくことである。

隣の芝は青いといわれるように、現在のルールより他のルールのほうが
いいように思えることはしばしばある。

いろんなルールを試してみるのはいいが、
過去に試した方法と、その際の問題点を記録しておかないと
何度も同じ道を堂々巡りすることになる。

「ドアなんて開けといたほうが入りやすいじゃん」と批判をする者に対しても、
「そしたらホコリ入りまくりでひどかったんだよ」と反論することができる。

ただし、現状維持バイアスのほうで詳しく述べるが、
過去のルールについては、その問題点をはっきり書いておき、
現行の情報と明確に区別しておかなければ、
新ルールへの移行の妨げになる可能性がある。


そして、ルールを明文化した後は、例外を認めないこと。
例外を認めだした途端に、明文化された情報の価値がなくなる。

認めざるを得ない例外が出てきたときには、
必ずその例外についても明文にしておくこと。


加えて大事なのは、重要でないことを話せる機会を作ることである。

いくら頑張って全ての情報を明文化しようとしても、
どうしても抜け落ちる情報が出てきてしまう。
だからこそ、たいして重要でない情報を共有できる場を作ることで
その抜け落ちに気づける機会を増やすのだ。

たとえばそれは喫煙室のようなたまり場や、
ネットワークを利用したBBSや社内ブログでもいい。
メンバー同士で食事などの余白の付き合いがあることも望ましい。


あとは、よくメールや社内回覧ファイルで、
重要度のランク付けをしているようなものがあるが、あれはあまり良くない気がする。

重要度のランク付けをするよりも、媒体を変えるべきだ。

同じ受信メールに重要度1のものと重要度5のものがあったって、
選択的に見る人なんて普通いないだろう。
どうせ全部見ることになる。
結果、重要メールまで見落としてしまうことが出てくる。

それよりは、緊急で重要なものはメール、心に留めておいてほしいものは掲示板、
どうでもいいつぶやきはブログ、というように媒体を分けるほうが実用的だろう。


◆目に入るしくみ

必ず情報が目に入るしくみを作ること。

「ドアは必ず閉めましょう」という貼り紙が、
ドアが開いている状態で見えない位置に貼ってあっては意味がない。

それと同じで、社内ブログを作っても全員がアクセスしなければ意味がないし、
メールを回しても読まれなければ意味がない。


そのためには、誰がその情報に触れたかをはっきりさせるしくみが必要だ。

会議の議事録であれば、会議の出席者または欠席者の名前を記録しておく。
回覧なら、必ず見た者はサインをするようにする。
メールなら、読んだ合図として携帯電話へワンコール(ワン切り)させるというのもいい。
そうやって、あとで「知らなかった」と言い訳ができないようにする。


情報を確認することを、目的の行為のための条件にするという方法もある。

ウェブサービスなどにユーザー登録する際に
利用規約を最後までスクロールさせないと
次の画面に進めないようになっているやつなんかがまさにそれだ。

「ドアは必ず閉めること」という情報を確認することで、
初めてドアが開けられるシステムにする。
(もちろんそんなシステムより自動ドア作るほうが早いですけど・・・)


しかし、一番良いのは、ルール自体を全員参加で決めることである。

自分のいないところで決まったルールには
どうしても不満を言いたくなるものだし、
可能ならば全員が納得した上でルールが作られるのが望ましい。



ふぃー、長くなってしまったので、後半はまた次のエントリーとして。

 →後編へ
edit |  10:09 |  我思う  | トラックバック(0) | コメント(2) | Top↑ | あとで読む このエントリーを含むはてなブックマーク
コメント
ドアを開けっ放しだと問題が発生するような状態に持っていくのがベターかと。
外の湿度を不快なぐらいまで上げるとか。

夏場だと、ビルの玄関口だけ異常に気温下げてそういう効果狙ってたりするところもあります。

あとは、ドア付近に張り紙しないで、ドア入った後に障害物として置くとか。
あとは、こちらも「いつもトイレを清潔にご利用いただき、ありがとうございます」的な心理効果を狙っていくか…ですかね。
infograve |  2008.10.29(水) 12:05 |  URL |  【コメント編集】
>infograve様

>あとは、こちらも「いつもトイレを清潔にご利用いただき、ありがとうございます」的な心理効果を狙っていくか…ですかね。


うわっ、ずばり書こうと思っていたことでした・・・。
oika |  2008.10.29(水) 21:13 |  URL |  【コメント編集】
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