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開けっ放しのドアはいかにして生じるか―情報共有と現状維持バイアス(後)  
2008.10.29 (Wed)
前回の続き。


現状維持バイアス

人は変化を恐れる生き物だ。

人生のプロジェクト』では、
「人は今より悪くなることと同じくらい、今より良くなることに恐怖心を抱くようだ」
と表現されていたが、言い得て妙である。

「ドアは必ず閉めましょう」という貼り紙が
目に入る場所に貼ってあったとしても、
目の前のドアが開けっ放しになっていれば
あえてそれを閉めようとはしないものだ。

実際、明文化されたルールと機能しているルールが違うことはよくあり、
そういうとき、しばしば機能している暗黙のルールが優先されるものである。


だから、新しいルールを早く定着させたければ、
「~しましょう」と呼びかけるよりも、
既にそうなっているように振舞うほうが賢い。

貼り紙をするならば、「ドアは必ず閉めましょう」ではなく、
「このドアは常に閉められています」となる。

そんなアホな貼り紙あるかと思うかもしれないが、
そういう貼り紙は既に存在する。

見たことがあるはずだ。
「いつも当店のトイレをきれいにご利用いただき、誠にありがとうございます」
というやつ。

この貼り紙は、感謝の意を示したくて貼っているわけではなく、
「このトイレはいつもきれいである」という事実を作るために貼っているのである。


募金箱にあらかじめお金を入れておくのも、
「お金を入れる人がいる」という事実が、人の募金行動を促すからである。

そういう意味で、「貼紙禁止!」という貼り紙は最悪。
そこに貼り紙があるという事実を、それ自体が作り上げてしまっている。


情報の共有のほうで、過去の変遷を記録しておくことが
新ルールへの移行の妨げになる可能性があると書いたのは、
それまでのルールを忘れさせてしまったほうが
現状維持バイアスは働きにくくなるからである。

そういえば消費税が内税表示になったのも、
増税しても変化がわかりにくいようにするためだと言っていた人もいた。


まとめ

開けっ放しのドアは、情報の共有ミスと現状維持バイアスによって生じる。

●情報共有
 1. 明文化
  ・過去の変遷は全て記録に残しておく
  ・例外を認めるケースも必ず明文化する
  ・重要でない情報を共有できる機会を設ける
  ・情報の重要度は媒体で区別する
 2. 目に入るしくみ
  ・誰がその情報を確認したか、はっきりわかるようにする
  ・情報を確認しなければ目的の行為ができないようにする
  ・ルールは極力全員参加で決める
●現状維持バイアス
 「~しましょう」よりも、事実を作ってしまう
  ・「いつもきれいにご利用いただき~」
  ・募金箱にはお金を入れておく
  ・旧制度を早く忘れさせたほうが、新制度は早く根付く



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