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「場合による」という役に立たない神  
2012.11.25 (Sun)
いつだったか誰かが言っていた。
歳をとるにつれ、極端な物言いが何もできなくなってくると。
ここ1,2年くらい、それをすごく実感している。


以前であれば、何か強烈な言葉・強烈な体験に出くわす度に
大げさにいえば「ああ、人生とはつまりこういうことだったんだな!」
というような頑強な信念が出来上がって、
ブログだとかでアウトプットしたりもしていた。

それらがすべて同じ方向をむいているうちは楽だったが、
そのうち全然違う考え方に触れて、
最初にあった柱と全く別の方向に柱が立ち始める。
するともう、結論としてあえて言葉にするなら、
「どっちもどっちだよね」「場合によるよね」としか言えなくなる。

誰かが「人間は素晴らしい生き物だ」と言って、そうだそうだと思っていたら
別の誰かが「人間は本当にカスだ」と言っていて、確かにそれもそうだと思い始める。
そうすると自分の中でアウフヘーベン的な働きが起こって
「人間って素晴らしいこともあるし、カスなこともあるよね」って
自分の中でジンテーゼ的なものが出来上がるんだけど、
これって全然人に伝えられない。

自分の中では「人間は素晴らしい」と「人間はカスだ」を経た上での
「場合による」なんだけど、いきなり人に「場合によるよね」って言っても
何をつまらないことを言っているんだおまえはという話になる。

さらに困ったことに、この自分の中に出来上がった第三のテーゼすら、
多分に自分個人の体験によるバイアスを含んでる自覚があって
人間って素晴らしいこともあればカスなこともあるんだよという主張さえ、
自分でも「そうかぁ?」と、どこか懐疑的に思ってたりするので
ますます他人に何かを教え説くことなんて無理だと思えてくる
(別にブログをさぼっていた言い訳にするわけではないのですが…)。


ただ、ここまで書いたこと自体は、別に自分では特に問題だと思っていなくて、
まあそんなもんだろと思っているけども、
たぶんこの先陥りがちなのが、最初から「どうせ場合によるだろ」と思考停止して
人間が素晴らしいともカスだとも考えようとしなくなることだろう。
これが一番ダメ。


自分の周りにいる人たちを眺めると、なんだかどっちかの人が多いなーという印象。

ひとつは、とにかく自分の経験か、または絶対的な一人の成功者を信仰していて
酒の席で淡々と説教する人。
統計や認知的バイアスの基礎の基礎も知らなくて、
話していてなんだか無益だなぁと思えてしまう。

いまひとつが、新しい考えに全く興味を持たない人。
「それは違う!」と否定するわけでもなくて、
「ああー、そういうのあるよね」と、既知の何かと同じタグをつけて保存して
以後見向きもしない。
歴史的にまったく新しいものなど今後何も出てこないと悟っている人。
個人的にはそれもそれで退屈に感じる。


いつだって魅力的なのは、自ら面白いことを実践していて、
それをひとつのサンプルとして話すことができる人だ。

だけど、ここ最近はそういう人と出会う機会が少なくて、
我ながら狭い世界で生きているなぁと嫌気が差しつつある。

以前なら「どんな人からでも学べることはある」なんて金言にすがることも
できたかもしれないが、今はそれも「場合によるよね」と思う。


個人的な話だが、漠然と、何かを変えなきゃとずっと思っている。
環境なのか、自分なのか。
今の仕事にやりがいはあるが、目に見える世界が狭い。
それでいて、仕事にとられる時間が長すぎる。

慣れつつある仕事を続けて安定した収入を得るのか、
または全く違う畑に飛び込んで進む道を模索するのか。
どちらが良いのかも「場合による」のだろう。
じゃあ今回はどちらの「場合」なのか。
結局のところ生きている限りは選択し続けなくちゃならない。
その途方もなさ、面倒くささを考えたら、
たとえば明確に道を示してくれる神の居る宗教なんかは
全く人にとって救いそのものだなという気がしてくる。



関連エントリー:
近況など。
テキトーな人は他人を嫌わない
汝、汝を許可せよ。―[書評]20歳のときに知っておきたかったこと

edit |  17:43 |  我思う  | トラックバック(0) | コメント(2) | Top↑ | あとで読む このエントリーを含むはてなブックマーク
コメント
こんばんは。
面白い題材だったのでコメントを記載してみたいと思います。

>人間が素晴らしいともカスだとも考えようとしなくなることだろう。
⇒極端にカスな人間と出会っていない証拠ではないでしょうか?
  だからといって、私がいうカス以上の人が極端に良く見えるかは
  別ですね。でも感度を磨き続けることは重要と思います。
  ジャンル別カスレベルでも作ってみたらおもしろそうですね。
  (カスと思うのは自由だと思いますが、性格がカスになりそうですね。笑)
  <ジャンル>
  ・会話(褒め方、相槌の仕方、例え方、ボケ方)
  ・食事(貧乏ゆすり、手遊び)
  ・挨拶
  ・服装などなど

無益だとか退屈な気持ちもわからないわけではないですが、
それらをおもしろさに転換出来るスキルを見に付けた方が早いというか、
おもしろく過ごせたり、新しいことに気付くきっかけになるような気がします。

ご自分で納得して背負うことが出来る良い選択ができますように。
なな |  2012.11.26(月) 02:46 |  URL |  【コメント編集】
お久しぶりですね

Twitterでのつぶやきもチェックしていますが、

僕はやっぱり、こっちのブログで書かれた文章を読むのが好きです

気が向いたら、ぜひ書いてください。忙しいとはおもいますが
 |  2012.12.04(火) 20:31 |  URL |  【コメント編集】
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