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人間はテキトーに判断する  
2007.12.30 (Sun)
大学で認知心理学を学んでおいてよかったなぁと思えるのは、
客観的データに基づいて議論することの大事さと、
人間が抱いてしまう先入観や偏見の危うさに気づくことができたことだ。

人間は、たぶん自分で思っているよりも
かなりテキトーに物事を判断してしまう生き物だ。

そして、どういうときにヒトがテキトーに判断してしまうのかを
知ることができる学問が心理学である(統計学的要素も含めて)。


例えば「確証バイアス」

自分の仮説に当てはまるケースだけに注目することで
その仮説を補強してしまうという、
世の中に非常に多く見られる傾向。

たとえば、「黒猫を見るとよくないことが起きる」という話を
信じている人がいたとする。

実際には、黒猫を見ようが見まいが、
人生の半分くらいはよくない出来事が占めるわけだが、
この仮説を信じていると、黒猫を見たときだけ、
その後の出来事について「あー、やっぱ黒猫見たからだ」と
判断してしまうわけである。

血液型による性格判断などにも、多分に確証バイアスが働く。
几帳面な人が2人いて、片方がA型、片方がB型だった場合に、
A型の人のケースだけに注目して
「やっぱりA型だね~」と言っていることが我々にはよくある。


また、例えば相関関係と因果関係の混同。

↓こういう発表はよくある。

酒量多いと自殺リスク倍増

 週1回以上飲酒し1日当たりの飲酒量が日本酒3合以上に相当する男性は、時々(月に1-3回)飲酒する程度という男性に比べ自殺の危険性が2・3倍とした大規模疫学調査の結果を、厚生労働省研究班(主任研究者・津金昌一郎国立がんセンター予防研究部長)が1日、英医学誌に発表した。 (中略)自殺リスクは飲酒量が多いほど高まる傾向がある一方、「全く飲まない」男性のリスクも2・3倍だった。  研究班は「飲まない人で高い理由は不明だが、酒量を適度に減らすことが自殺防止に役立つということは言えそうだ」としている。


こういう調査結果が出ると、人は簡単に
「アルコールで自殺リスクが高くなるのか!」と考えてしまいがちである。
しかし、これは単に飲酒量と自殺リスクの「相関」の話であって、「因果」の話ではない
(この場合相関といえるかも微妙だけど)。

つまり、お酒を飲むことが自殺願望につながったかどうかはわからない。
例えば、
「お酒を激しく飲む人」=「飲まなきゃやってられないくらいストレスが溜まってる人」
と考えれば、自殺の原因は「お酒」でなくて「ストレス」である。
むしろそう考えたほうが、全く飲まない人でも自殺リスクが高いことは説明しやすそうだ。


今回こういうことを書こうと思ったのは、
コミックにシュリンクをしないとどうなるか?」が興味深かったので。

シュリンクというのは、本屋の本(特に漫画)に
立ち読みできないようにかけられてるビニール(?)のこと。
これを無くして売上げがどうなるかを検証した記事である。


人間は基本的に、自分に都合のいい仮説を支持しようとする生き物だ。

地下鉄で携帯電話の電源を切るのが面倒くさい人は
「実際ペースメーカーに影響なんてないんだよ」って言うし、
著作権違反の動画を見たい人は
「違法にでも見られることで、DVDの売上げはむしろ上がるんだよ」って言うし、
本屋で立ち読みしたい人は、
「シュリンク無くしたって売上げは落ちねーだろ」って言う。

でも、まずそれなりに客観的なデータをもとに話をする習慣をつけたい。


さて、コミックにシュリンクをしない場合、売上げはどうなるのか。
答えは↓こちらで。

コミックにシュリンクをしないとどうなるか?(その1)
コミックにシュリンクをしないとどうなるか?(その2)
コミックにシュリンクをしないとどうなるか?(その3)(本屋のほんね)


関連エントリー:
 文部科学省の全国学力テストを検証する3


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